そろそろ夏。夏といえば怪談の季節だ。ところで日本の怪談は、「赤い紙青い紙」「花子さん」「紙をくれ」・・・などなど、トイレにまつわる怪談・怪異が多く伝承されている。なぜ日本にはトイレ絡みの怪談・怪異が多いのだろう?その理由を探ってみたい。
ろうそく

[科学的側面から]
トイレで排尿・排便すると体温が下がる。実際に実験してみてほしい。トイレに入る前と後では、後の方が体温が低い。それも当然、体温で温められた尿・便が体の外に排出されるわけであるから、人体はそれだけの熱量を失っていることになる。0.2℃から、差が大きい人であると1℃ほども変わってしまう。いきなり体温が降下すると、人体は元の体温に戻そうとする機能が働くためブルッと震えがくることがある。これが捉えようによっては「ゾクッときた」感覚にもなるから、霊に憑依された、あるいは霊と出会ってしまった感覚と誤解され、トイレで多くの怪談・怪異が生まれると推測出来る。
実際、その他の怪談・怪異も体温の変化が関係している場所が関わってくる場合が多い。階段、海・河川・滝、交差点、山、廊下・・・風の流れ、気圧の変化、水流など、体温の変化をもたらす場所ばかりで怪談・怪異は生まれている。

[文化的側面から]
日本には八百万の神々がいる。神道の考えに基づくものであり、トイレにはトイレの神様(厠神:かわやがみ)がいるとされる。風水でも水場が重視され、トイレの方角・位置は特に重要だ。考えようによっては、人が物を食べ、排尿・排便する場所がトイレなのであるから、食物たちが最後に行き着く墓場と捉えることも出来る。その場合仏教にも関係してくることになる。日本ではトイレを常に清潔に保つことが常識であることからも裏付けられるように、このような文化・風習があるから、無意識のうちに日本人はトイレを宗教・祟り・霊的な存在と深く結びつけてしまうのかもしれない。
また最近だと、2012年頃に元フジテレビアナウンサーの塚越孝元氏が同社屋内のトイレで首を吊って自殺したことが記憶に新しい。自宅での自殺であるとそうはいかないが、会社・企業、公共の建物などであると、トイレは個室であり半密室、中で何をしているのか周囲からバレにくいが亡骸を見付けてくれる可能性も高い格好の自殺場所だ。こういった条件からも、無意識のうちにトイレを霊的な方向に結びつけて考えてしまっている可能性はある。

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日本には世界の水準よりも数多くの種類の怪談・怪異が存在しているらしい。上記のように科学的側面と文化的側面から考察してみたが、なにより日本人が鋭敏で繊細かつ創造力豊かな国民性であることが多種多様な怪談・怪異を生み出しているのは間違いないだろう。


赤松伊織